年末年始の賑わいやバタバタもいくらなんでも落ち着いて、
世間様というか、催事ものとしては
早くも“恵方巻”だの“聖バレンタインデー”だのが取り沙汰されていたりする。

『今年も贅沢志向なんか？』
『そうみたいだな。』

販促キャンペーンとかイベントも多数取り扱い、
季節ものの情報が前倒しの“業界”に近しい職なせいか、
ルフィが期待たっぷりのドングリ目を大きく見開きワクワクと訊いて来て、
今年も恵方巻の味見を依頼され、最終審査分を持って帰ったご亭主が、
クーラーボックスに詰められた試作品のラインナップから
そうと応じたのが昨夜の話。
有名料亭の味とか、今年は不漁らしいカニやイクラをふんだんに使ったとか、
贅を謳ってる品が目立ったが、
だからといって景気がいいとは限らない。
特別にだけ贅沢するという考え方の人が多いのであって、
日頃は財布のひもが固い証明ともいえ。
むしろ、無駄遣いしても惜しくないよな傾向になった時ほど、
奇をてらった変わり種が蔓延するようだ。(諸説あり) 笑

「そういう仕事だからか、ゾロも食べ物の旬ってのやっと覚えたよな。」
「〜〜〜。」

ふふーと笑ったルフィには厭味で言ったつもりはなかろうが、
今現在の自分の肩書を想うと、ちょっと恥ずかしい黒歴史なので、
あまり表で言わないでほしいゾロだったりするようで。
しかも、ちょうど今、そういうことが反映しまくりの場所にいるのだ、
これはちょっとばかり居心地も悪い。
目の前の陳列棚には、
今期は雨や雪のせいで高値が続く白菜やキャベツが、
1/4カットという良心的なサイズにされて積まれており。
お勧めのコーナーでも、
鍋にするならキノコはいかがと、
みぞれ鍋よりエノキ鍋なんてPOPが躍ってたりもして。
それを眺めつつ、小柄な奥方が何気なく口にしたのが、

「かぼちゃが冬にとれるって思ってたし、ほうれん草は夏野菜だって思ってたもんな。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ルフィさん、その辺で。」

学生時代に、自分よりも小柄な先輩へ敬語使っていたのを思い出し、
何とか穏便にと口調を変えてしまった、精悍な見栄えのご亭主だったりし。
そう、生鮮食品の旬に関しての常識が、
実は食べる専門のルフィの方が真っ当だったのだ、ほんの数年前までは。
新人の頃からすでに、
販促へのキャンペーンやイベントを扱うことが多い企画課という部署に居たけれど、
最初は食品よりも、雑貨とか男性コスメ系が主だったので、
世間様のイベントに通じていればよかったのだが、
成績が上がるにつれ、より広範な畑への出番が増えて。
恋人とのイベントデートに○○ホテルのディナーはいかがとか、
スキーツアーなら▼▼旅行、△△とのタイアップツアーがお得とか、
もっとずっと色々な知識が要るよな身となり。
そういった趣向を考える時に、
季節の旬とか、ご当地の名産とか、
世代が上の人に会う時ほどちゃんと知っておかなきゃあ
胸襟を開いてはくれないというの、いやってほど経験もして。
其れで身に付いたたたき上げのあれやこれやを、
この童顔の坊ちゃんたら、当たり前のこととしてちゃんと知っていたのだ、
てぇい、意外だったよ、はっきり言って・うん。

「あ、でも、縮みほうれん草とかはゾロに教わったもんなぁvv」

寒の時期に出回る、葉の仕様がちりめんみたいになってるそれは、
雪の時期にわざとに晒して育てるため、
ほうれん草が頑張って甘味を蓄えるので風味が増すのだそうで。

「あと、犬の種類がいっぱいいるのは、
　人の勝手に合わせたせいだっていうのも…、
　あれ？これはサンジから聞いたんだっけ？」

「〜〜〜〜っ＃」

そうだよ、それは俺もルフィから聞いたんだよ。
ブルやボクサーの鼻が低いのは、
牛クラスのでかい獲物の腹に噛みつきやすいように改良されたから。
マルチーズやパピヨン、テリアなんていう小型犬がいるのは、
ウサギやアナグマの巣に潜り込めるようにって小さい犬が生み出され、
それを宮廷のご婦人方が抱えられるよう、愛らしい風貌のに改良したからだそうで。
それのあおり、本来は安産の象徴だったはずなのに、小型化したんで難産しやすくなったらしい。

「でも、あれだよな。」

これと、ああそれからこれもと、
カートを２台押してるこちらへ、
次から次、大家族用だろうでかいパックの野菜や肉を差し出す伴侶様、

「いちごのフェアをイマドキにやんのは、俺も何か勝手が違うんだよなぁ。」

これってゾロが “なんかおかしくねぇか”って言ってたんだよな。
オレもさ、小さいころの誕生日にいつも、
知り合いのおばさんが摘みにおいでって畑を開放してくれたの覚えてて。
なのに都会じゃあ何でこんな一番寒い時期なんだろって、
輸入ものか？って不思議に思ってて、と。
ひょこりと小首を傾げている姿が、

　たとえ鶏モモ５枚パックの端っこを口許に当てていようと、
　何ともかわいいなぁと思えてしまうのは、

こちらも俺が “天然”とやらだからだろか、なんて。
寡黙なご亭主はこっそりと思っているのだが…。



　　ゾロさん、それ違う。それはただの岡惚れvv




　　〜Fine〜　　18.01.15.

　＊文ストで書こうと思ったんですが、
　　料理好きな中也さんでも (あくまでもウチの)
　　あんまりこういう話は持ち出さないよな気がしてこっちで投下。
　　そして、半分くらいは私の実話です。
　　カボチャもほうれん草も逆だと思ってましたよ。
　　だってほうれん草はいかにも夏の食べ物って印象が強かったし、
　　カボチャは冬至に食べると風邪ひかないっていうじゃないですか。
　　同じようなレベルで、八朔や甘夏も今時分のものって気がつかなかったしなぁ。
　　(自分で買ってまでして食べるようになって覚えたよ、うん。)
　　そしてそして、
　　いちごフェアを今時分に催すのが、いまだに不思議でしょうがありません。
　　どうだ、微妙に年寄りでしょう？(笑)

*めるふぉvv

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